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この音源はBIRD'S EYES Vol.32という、今のところオフィシャルには販売されていないCDに入っていまして、つい最近はじめてその存在を知りました。この音源を聴くことで、やっと音源紹介15の音源がフランク・モーガンとドン・ウィルカーソンを交えたJirahr Zorathian's Ranchでの録音の一部だということの確信がもてました。音源紹介15の内容と同じメンバーの演奏が、この音源のようにメンバーが聞き分けられるぐらいにまとまった形で発掘されたからですね。 Jirahr Zorathian's Ranchでのこのメンバーの入ったセッションって、実は記録に残されているだけでも3日分あることから、その場限りのジャムセッションではなく、ある期間レギュラーバンド的に演奏を続けていたことが推察されます。 しかもこのメンバーでのセッション、サックス陣ががっぷり四つに組んだかなり濃密なセッションだったことがわかりました。 この音源の目玉は「Au Privave」でしょう。多くのジャズメンが演奏している人気曲ながら、実際パーカーの演奏はVERVEでのスタジオ録音の2テイク分が残されているのみでした。そのライブバージョンが公開された、もうその事実だけでこの音源の目玉は決まってしまったようなものです。あのテーマメロディーが勢いのあるライブの場から聞こえてくるだけでワクワクします。 しかもその内容は、メンバーお互いがお互いを刺激するような盛り上がり方で、ムンムンとした熱気がただよっています。 なによりパーカーと競演したサックス陣の功績は大きいと思います。 このセッションの中では少々異質な存在のドン・ウィルカーソン。音源紹介15ではわかりづらかった彼のR&B臭さがこの演奏では充分に発揮されています。ライブの空気をどんどん濃いものにしてくれます。 そして、それにも増してフランク・モーガンがすごい。図抜けた表現力を持っていると思います。手を変え品を変え様々なフレーズと表情をみせてくれて、聞き惚れてしまいます。いろいろなアイデアが泉のように湧いて出てきます。そのフレーズはバップ的な組み立てとは別の要素が入り込んできているようにおもいます。ウィルカーソン同様のR&B臭さも多少まじっていますね。 このときドン・ウィルカーソンは20歳そこそこ、フランク・モーガンにいたっては18歳(!)。ビ・バップとは別の要素も取り入れようとしつつある新しい世代なのですね。 若造二人にあてられたのか、演奏が進むにつれて、あのパーカーがめずらしく熱くなってくるのがわかります。曲の後半は3人で4小節づつソロを回していくのですが徐々にパーカーの音圧が高まってくるような感じがします。モーガンを押しのけるように吹き始めたり、多少破綻気味に高音フレーズを吹きぬこうとします。そんなパーカーの様子はソニー・クリスと競演したイングルウッドでのクールな吹きっぷりとは対照的です。パーカーの意地を感じます。 元祖ビ・バッパーと、ポスト・ビ・バッパーとの、覇権争いのような意地のぶつかり合いがこの熱気を生んでいるのではないでしょうか。 でも、その熱気は実にファンキーで楽しげ。互いに同じフレーズを吹きあったりして、遊びごごろも感じられます。パーカーも自分の意地を見せつけようとしながらも、なかばニヤつきながら演奏していたのかもしれませんね。
2002.12.14 よういち
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