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1953年の3月と9月に行われたジャズクラブStoryvilleでのライブの、ボストンのラジオ局WDHDによる中継放送です。 その音質のせいかどうも演奏が小粒でおとなしく聞こえてきます。観客も上品そうで、ついでにアナウンスも紳士的でおとなしい。 アップテンポの曲も当然演奏しているのですが、私にはパーカーのサウンドが体の奥まで響いてきません。音質のせいかそれとも本人の体調のせいか、タンギングが不安定に感じられてしまいサックスの切れ味をいまいち感じにくいです。 パーカーがバリバリ吹いてもやはり演奏が小粒に感じられてしまいます。 とはいえ、じっくり聴き込んでいけばそのフレーズは上質であることがわかります。 耳になじみの典型的パーカーフレーズで構成されていますが、そのフレーズ個々のつなぎ方がみごとです。 またアナウンスにかぶさるように演奏の始まる「Now's the Time」のソロなど、パーカーのブルース独特の気持ちよさをひしひしと感じます。そして5~6小節を一気に吹ききるフレーズは敵のタックルを次々にかいくぐるアメリカンフットボーラーようなスリルです。 しかしながら音に迫力が無いのがまったく残念。 結局この音質、この雰囲気に一番似つかわしいのは「Don't Blame Me」のような落ち着いたスタンダードになるのだとおもいます。目玉となるのはここでしかパーカーの録音としては残されていない「I'll Walk Alone」と「Dancing on The Ceiling」でしょうか。 「I'll Walk Alone」はストレートに吹かれるテーマがステキです。リズムセクションの伴奏は小粋な優雅さを漂わせていますが、パーカー自身の吹奏はあくまで飾らずストレートでどことなく陰りを感じさせて、その剥き出しのサウンドにかえって私は心惹かれます。 「Dancing on The Ceiling」ではサー・チャールズ・トンプソンのピアノソロから始まりますが、これが力強くも心温まる演奏でホッとさせてくれます。それを受け継いだパーカーのソロもその雰囲気を受け継いだハッピーなソロです。でもそのソロにもどことなく陰りを感じるのはなぜでしょう? ところでこの「Dancing on The Ceiling」、丁度このライブの時に行われていたボストンの選挙の結果速報で放送が中断されたため、演奏の途中からしか音源が残されていないそうです。放送局の方針が許せませんね。 でもピアノソロとパーカーのソロだけで終わるこの音源、小品として完成しているように感じるのが不思議です。
2003.8.23 よういち
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