個人的 パーカー音源紹介 27
録音音源:
1952年 6月 16日 C.A. / Inglewood の Trade Winds Clubでのライブ
主な収録CD:
JAZZ DOOR「BIRD&CHET / INGLEWOOD JAM」
Sound Hills「PERFECT COMPLETE COLLECTION Vol.12, 13」
1952/ 6/16
(as )C.P., Sonny Criss
(tp )Chet Baker
( p )Al Haig, Russ Freeman
( b )Harry Babasin
(ds )Lawrence Marable

  1. The Squirrel
  2. Irresistible You ( They Didn't Believe Me )
  3. Indiana ( Donna Lee )
  4. Liza
INGLEWOOD JAM

 一聴して気になるところは、なんといってもパーカーとソニークリスとのアルト対決でしょう(別に戦っているわけじゃないんだけど)。でも、この勝負の判定は、パーカーファンにとってはパーカーの勝ち、クリスファンにとってはクリスの勝ち、と結構単純にあっさり結論付けられてしまうんじゃないでしょうか。
 というのも、このふたり初めて聴くと、見分け(聴き分け)がつかないほど似ていたりはするものの、音楽のコンセプトがまったく違うからです。

 パーカーが淡々とクールに、芯のある音で身体の内側にもぐりこんでくるようなフレーズを丹念に置いていくのに対して、クリスは、もう熱さむきだしでクリスのサックスの「味」を思い切りぶつけてきます。

 「味」を出す、という行為は、ビ・バップ(というかパーカー)以降のジャズメンにとっての残り少ない道なのでは、と個人的にはおもってしまいますが、クリスは惜しげもなくここでその「味」を発揮しているという意味で、もうぜっこうちょうです(ぜっこうちょうの「ぜつ」は「舌」の「ぜつ」と書きます~)。パーカーと共演できてよっぽどうれしかったんでしょうね。
 ホットに無責任に吹きまくる吹きまくる。そしてサウンドがクサイ、クサイ。例えば「The Squirrel」のピアノソロのあとのクリスのソロ。2音のフレーズから始まる部分。ク、クサイ。パーカーなら絶対吹かないでしょう。そしてどこでも、ところかまわず下世話なコブシをころがしまくっています。もう、たまらん。納豆ごはんのような味わいです。はまったらやみつきになります。

 パーカーもよっぽど無責任に吹きまくるようなイメージがありますが、クリスに比べたら、とても繊細なバランスの取れたフレーズなんだということが感じ取れるとおもいます。鍛練の賜物か、はたまた本能と体質によるものか。
 吹きまくっているように見えるパーカーですが、実は絶妙な間を取って、休符をうまく織り込んで吹いていることがわかります。こうすることで身体に引っ掛かるような感覚をつくりだして、結果、身体に共鳴するようなフレーズが生み出されるのでは、とおもいます。かつては徹底研究していて今は影も形もみえないレスターヤングの影響が、こんなところに残っているようです。クリスと比べたら、そっけなく無味乾燥にも取られがちな音も、身体に共鳴するサウンドにとって実は不可欠です。「味」といったものはこの場合邪魔になるとおもいます。

 クリスの「味」、パーカーの身体に訴えかけるサウンド、自分がジャズに求めるものを選んで楽しめば良いのではないでしょうか。

 さて、二人に隠れてしまって目立たなくなってますが、ジャズクラブの暗い小屋に射し込む一筋の太陽の光のようなチェットベイカーのトランペットも好調です。
 ウエストコーストジャズ特有の、律義に音楽を進めるリズムセクションもいいですね。淡々とはしていますがローレンスマラブルもいろいろ工夫してドラム叩いています。

 あと、全然どうでもいいけど「Trade Winds」というジャズクラブの店名が大好き。

 

 

1999. 8.21 よういち 

 

 

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