個人的 パーカー音源紹介 61
録音音源:
1949年 9月 18日 N.Y. Carnegie Hall でのコンサート
主な収録CD:
Verve「Jazz at the Philharmonic 1949」
「THE COMPLETE CHARLIE PARKER ON VERVE」
1949/ 9/18
(as )C.P.
(ts )Flip Phillips, Lester Young
(tp )Roy Eldridge
(tb )Tommy Turk
( p )Hank Jones
( b )Ray Brown
(ds )Buddy Rich
(voc)Ella Fitzgerald
  1. The Opener
  2. Lester Leaps in
  3. Embraceable you
  4. The Closer
  5. Ow
  6. Flyin' Home
  7. How High the Moon
  8. Perdido
Jazz at the Philharmonic 1949


'49年9月のJ.A.T.Pコンサートです。この頃になると録音バランスがずいぶん良くなり、そのせいかパーカーのソロが周囲から浮いて聞こえることもほとんどなくなってきたようにおもいます。
カーネギーホールの会場の空気感が伝わり、会場すみずみにひろがるパーカーのサックスの音そのものが、気持ちよく聞こえます。この音質だと早いパッセージも非常になめらかな疾走感を持つものに聞こえてきます。

Embraceable you」のようなバラッドも、会場にひろがるサックスの音の美しさだけで聴かせてくれます。ただ、この曲ではパーカー以外の人のソロが非常に良くて、結果的にはパーカーが目立っていませんね。

パーカーの一番の見せ場は「The Closer」にあるとおもいます。フリップ、ターク、レスター、とソロがまわっていき、ロイ・エルドリッジとバディ・リッチの掛け合いで締めくくられて演奏が終わったか?と思わせます。そこへはじめてパーカーが、よどみない高速フレーズでフェイドインしてきます。この満を持しての登場にゾクゾクします。あとはパーカーの疾走感に浸るだけです。
ところでパーカーにはアドリブを吹く際に、2小節ごとに吹くのを一瞬止め、ストップモーションを加えることでソロにアクセントをつけるという得意技がありまして、この時も途中からそれを実行し始めるのですが、他のフロント陣も即座にそのストップモーションに即したリフを奏ではじめるのが実に見事です。その場の即興で対応したものならとんでもないことですし、あらかじめ打ち合わせてやったのだとしても、それはそれで大変なことではないでしょうか。

後半はエラ・フィッツジェラルドのボーカルがフューチャーされて、一気に会場が和やかな雰囲気になります。
How High the Moon」の演奏前に、周囲にきっぱり「UP !」と告げてアップテンポを要求するエラが頼もしいです。そして実際の歌いっぷリも、その頼もしさそのままに快活ですがすがしい。
一方、エラに続くパーカーは、出だしで「Ornithology」のテーマをそのまま吹きそうになってしまい、おもわずこちらも苦笑してしまいますが、実はこの曲でのパーカーの聴き所は別に隠されています。
演奏の締めくくりでフロント陣が入り乱れて好きに吹いている部分がありますが、注意深くパーカーの吹いているところだけ聴き分けていくと、ある上昇フレーズで普段のパーカーにはありえない高音を吹き抜いています。お祭り的企画のJ.A.T.Pの中、自分のソロではこういう派手なことをしないで、誰も気が付かないところでやっているパーカーのひねくれっぷりにニヤリとしてしまいますね。

コンサート最後の曲「Perdido」では、パーカーはダブルタイムフレーズをいかに長く持たせられるかに挑戦しています。またエラのスキャットの後ろでも軽くオブリガードを付けており、なんだかノリノリです。

パーカーはこのコンサートではあまり前面に出てこず、場をわきまえた演奏をしておりますが、そのぶん気楽なのか演奏にどことなく遊び心が感じられます。その遊び心をいかにむしゃぶり尽くすかがこの音源を最大限に楽しむポイントではないでしょうか。
 

 

2003.9.27 よういち 

 

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by CMG Worldwide Inc. USA

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