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パーカーとディジー、ビ・バップの双頭がそろった'47年9月のカーネギー・ホールのコンサートです。ビ・バップがジャズシーンに広まる一里塚となるコンサートだったのではないかと思います。 音質は個人的には好みではないのですが、パーカーの音源の中では非常に良好な部類ではないでしょうか。会場がカーネギー・ホールなだけに小さなライブハウスの空気感は期待できず、バックの演奏、とくにピアノの音があまり聞えてこないのが個人的には残念ですが(あまり弾いていないのかも?)、その代わりに、太くザックリしていて艶のあるパーカーのサックスが充分に聞えてきます。Savoyの録音に多少近いイメージを私は持っています。「Groovin' High」や「Confirmation」の少し落ち着いたテンポの曲では、その艶やかな音が脳みそにとろりと浸透してきて気持ちいいですよ。 フレーズも快調で、先の2曲もソロの流れが寸断せずに次から次へと繋がっていく様が気持ちいいです。ソロ全体に一本の水脈がとくとくと流れているかのようです。 一番の目玉は「Ko Ko」だと思うのですが、とんでもないテンポで飛ばしまくっているのでパーカーのフレーズを聞き取るのも至難の業です。ドラムスも一体何を叩いているのかわからなかったりします。 でもこの「Ko Ko」、一般に出回っている音源でよく聴いてみるとSavoyのスタジオ版よりキーが高く、どうもピッチが高くなっているのではないかと思われるフシがあります(それは「Confirmation」にも感じられます)。 ですので、スタジオ版での同曲の演奏にあわせて自分なりにピッチを修正した音源を、私は聴いています。結果的にパーカーのフレーズにもついていきやすくなり、ドラムスもきちんとパーカーに合わせて叩いているんだな~と気が付くようになりました。 こうしてピッチを修正した音源をじっくり聴いてみると、形あるフレーズをあのテンポの中で神経質なまでにきちんと吹ききっているパーカーの姿に愕然とします。このテンポなら少しくらい息の切れる瞬間があってもおかしくないのに、決してお茶を濁したフレーズでごまかそうとしません。最初から最後までパーカー独特の構築美に満ちたフレーズを執拗に積み上げていきます。 それでもパーカー、さすがにこのテンポを楽勝でこなしているようには思えず、多少あぶなっかしいところもあります。本人にもできるかできないかギリギリのテンポ設定のようです。でもそれだけにいい意味でラフで、スリル満点でもあります。 こんな異常なテンポで吹くパーカーを聴くときいつも思うのですが、なぜわざわざこんなギリギリのテンポにして、細やかに組み立てたフレーズを律儀に詰め込んで、吹こうとするのでしょうね。そこには音楽的な狙いよりも、パーカーのサガというか、何かこう、どろどろとした病的なものを感じてしまいます。 この日のコンサート、ガレスピーがメインでパーカーはゲストの立場なのですが、ガレスピーはパーカーを前面に出してソロを取らせています。パーカーのソロに賑やかしの掛け声をかけて、「Groovin' High」のハイノートのエンディングや「Ko Ko」のテーマの掛け合いなどで決めるべき所は決める。パーカーの凄みやどろどろとした部分もひっくるんで、カーネギー・ホールの観客にビ・バップをアピールできるようにきちんとパッケージして提供するガレスピー、実に大人ですね。 2004. 2. 7 よういち
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