|
||
|
|
|
(個人的パーカー音源紹介50の続きです) 本当のところ、この音源の演奏のフレーズ自体は、一部をのぞけばある程度定型化した'53年当時のフレーズそのままのもので、'40年代の柔軟性が復活しただとか、'53年当時のほかの音源と比べて格段に冴えているともおもわれません。この時の演奏が特に出来が良い、というわけではなかったと私は思っています。 しかしながら、フレーズの切れ味や身体に切り込んでくる感覚、身体が共振する感覚をこのうえなく鋭敏に感じ取れるのは、録音のよさによるものなのでしょうか。なにより他の音源にはみられない異常な切迫感が感じ取れます。 「Just You, Just Me」のような素朴な小唄が、こんな高揚感のある演奏になってしまうことなど、この演奏を聴いてみるまではだれも思わないでしょう。 私の一番大好きなスタンダード曲「I'll Remember April」をパーカーは3rd setで、まるでこれが人生最期の演奏であるかのような燃焼っぷりで吹いています。4th setでの同曲ではベニー・ハリスの吹くテーマメロディーのバックで吹いているパーカーのリフの突き抜けた透明さが、ああ神々しい。 おそらくはこの音源での演奏が特別な出来なのではなく、好不調の差はあれ当時はつねにこんな印象の演奏をしていたのではないかと、わたしは推測します。ただ、それを捉えきれる音源がなかったというだけではないかと。 さらにこの音源を聴きはじめてから数年後、このときの演奏がグラフトンのプラスチックアルトサックスで演奏されたという事実を知るにいたり、パーカーの底知れなさと空恐ろしさに身震いしました。 もう、ここぞとばかりに力の限り激賞してしまいました。この音源、ぜひ聴いてみてください。
2001. 9.28 よういち
Permission granted by Doris Parker under license by CMG Worldwide Inc. USA |