個人的 パーカー音源紹介 51
録音音源:
1953年 7月26日 N.Y. Open Doorでのライブ収録 (3rd, 4th set)
主な収録CD:
PHILOLOGY「BIRD'S EYES Vol.25」(3rd, 4th set)
ember records「CHARLIE PARKER At The Open Door」
1953/ 7/26
(as )C.P.
(tp )Benny Harris
( p )Al Haig, Bud Powell(?)
( b )Charles Mingus
(ds )Art Taylor

3rd set

  1. I Remember You
  2. All the Things You Are
  3. Just You, Just Me
  4. I'll Remember April
  5. Hot House
  6. 52nd Street Theme
4th set
  1. I Cover the Waterfront
  2. This Time the Dreams on Me
  3. I'll Remember April/ 52nd Street Theme
BIRD'S EYES Vol.25


(個人的パーカー音源紹介50の続きです)

 本当のところ、この音源の演奏のフレーズ自体は、一部をのぞけばある程度定型化した'53年当時のフレーズそのままのもので、'40年代の柔軟性が復活しただとか、'53年当時のほかの音源と比べて格段に冴えているともおもわれません。この時の演奏が特に出来が良い、というわけではなかったと私は思っています。

 しかしながら、フレーズの切れ味や身体に切り込んでくる感覚、身体が共振する感覚をこのうえなく鋭敏に感じ取れるのは、録音のよさによるものなのでしょうか。なにより他の音源にはみられない異常な切迫感が感じ取れます。

 「Just You, Just Me」のような素朴な小唄が、こんな高揚感のある演奏になってしまうことなど、この演奏を聴いてみるまではだれも思わないでしょう。 私の一番大好きなスタンダード曲「I'll Remember April」をパーカーは3rd setで、まるでこれが人生最期の演奏であるかのような燃焼っぷりで吹いています。4th setでの同曲ではベニー・ハリスの吹くテーマメロディーのバックで吹いているパーカーのリフの突き抜けた透明さが、ああ神々しい。

  おそらくはこの音源での演奏が特別な出来なのではなく、好不調の差はあれ当時はつねにこんな印象の演奏をしていたのではないかと、わたしは推測します。ただ、それを捉えきれる音源がなかったというだけではないかと。
 「パーカーのライブの真の姿を捉えた音源はない」と言ったのはたしかエリック・ドルフィーだったでしょうか。この音源はその真の姿の一端を捉えたものなのではないかとわたしは想像しています。この音源が出てきたとき、わたしが今までイメージしていたパーカー像がまったくの認識不足だったことに愕然とし、同時にこの音源で再認識したパーカー像もまだまだ氷山の一角なのではないか、そんなことをおもわせました。

 さらにこの音源を聴きはじめてから数年後、このときの演奏がグラフトンのプラスチックアルトサックスで演奏されたという事実を知るにいたり、パーカーの底知れなさと空恐ろしさに身震いしました。

 もう、ここぞとばかりに力の限り激賞してしまいました。この音源、ぜひ聴いてみてください。 

 

 

2001. 9.28 よういち 

 

 

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by CMG Worldwide Inc. USA

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