個人的 パーカー音源紹介 38
録音音源:
1953年 6月14日 Boston Hi-Hat Clubでのライブ
主な収録CD:
Fresh Sound Records「BIRD IN BOSTON Live at the HI-HAT Vol.1」
1952/ 9/26
(as )C.P.
(tp )Herb Pomeroy
( p )Dean Erle
( b )Bernie Griggs
(ds )Bill Graham

  1. Cool Blues
  2. Scrapple from the Apple
  3. Laura
  4. Cheryl
  5. Ornithology
  6. 52nd Street theme
HI-HAT Vol.1


 1953年という年はなかなか微妙な年でして、この年のパーカーの音源のなかには、「さすがのパーカーも衰えてきたな」と思うものもあれば、'40年代とはまた別の凄みを持つ音源もあったりします。
 その評価のカギは、パーカーの演奏スタイルがすっかり成熟したところにあるとおもいます。このHi-Hatクラブでのパーカーは体調が良さそうで演奏はなめらかで安定しており、好きに吹いている反面、とりたてて無茶なことをすることも無く、落ち着きも感じられる「好演奏」です。完成された強みと弱みを同時に感じる演奏です。それを良いとみるか悪いとみるか、もう実際聴かれた方におまかせします(無責任!)。

 一方、パーカーのリズムセクション。トランペットがハーブ・ポメロイ、ピアノがディーン・イール(?)・・・。ハーブ・ポメロイの名前をちょっと聞いたことがある程度で、あとはほとんど無名な、少なくともわたしの知らないメンバーばかりです。ボストンの地元の有力ミュージシャンのようです。実は有名だったらゴメン。
 しかしながら、実際聴いてみるとパーカーのワンマンぶりに埋没することなく、堂々と演奏していることがわかります。ポメロイも自信を持ってソロを吹ききっています。そしてディーン・イール。パーカーのソロに臆することなく、うるおいのある色彩豊かなバッキングでパーカーを盛り立てます。特に「Laura」での演奏ではパーカーのソロの影でもピアノで自己主張しています。確信を持って音を選んでいることがわかります。

 この音源を聴くと、時代が確実に変わっているのだということがわかります。
 かつてのビ・バップは、凡百のジャズメンを蹴散らす、天才と呼ばれるような一部のジャズメンにしかついていけないものだったようにおもいます。この音源の時期に至ってその演奏スタイル、技術的な部分は、もうすこし一般の、才能あるミュージシャンに消化されて広まったということでしょうか。バップの演奏スタイルが確立されてきたせいか、ビ・バップ独特のアナーキズムは薄れてきたものの、それぞれのミュージシャンに演奏の中での居場所が確保されて、個々の持ち味を発揮しやすい状況になってきたようにみえます。
 それはとりもなおさずハード・バップの時代の萌芽を予感させます。

 と終わらせたら話がうまくまとまるのでしょうが、いままでの話を混乱させるのが、ビ・バップ以前のスイングスタイルでバディ・リッチばりに自己主張するビリー・グラハムのドラムだったりします・・・。  

 

 

2000. 3. 4 よういち 


 

 ドラムスがBill Grahamではなく、Bill"Baggy"Grantだというご指摘がありました。たしかにClauch Schlouch氏のディスコグラフィやPeter Losin氏のデータベースにはそのようにかかれています。上記Fresh Sound Records盤ではBill Grahamと書かれているんですが。

 もう~あいかわらずいいかげんなんだから。  

 

 

2000. 8.15 よういち 

 

 

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