チャーリー・パーカーのオリジナルSPレコード鑑賞会 「SP Vibrations Vol.1 Charlie Parker」レポート 2012年7月1日(日)東京・四谷の「喫茶茶会記」で行われた、オリジナルSPレコード盤でチャーリー・パーカーを徹底的に鑑賞する会合「SP Vibrations Vol.1 Charlie Parker」に参加した。世界的パーカー・コレクター、三浦和三郎さんの所有する超貴重なSP盤をおしげもなく大量にかけまくるという、この上なく貴重な会合であった。 また、比較的理路整然としているといわれる彼の音楽だが、その音はモダン・ジャズ以降の演奏者達と比べて格段にどろどろとしたニュアンスに満ちている。それをより細緻に伝えられる解像度がSPレコードにはある。 9年前にもパーカーのSPレコード鑑賞会に参加したことがある。その時は片手で持ち運べそうなポータブルプレイヤーのみでの鑑賞だったが、音と一緒に伝わってくる濃密な気配と演奏者の息吹に驚いたことを覚えている。回転するレコード盤の真上に、リカちゃんハウスのようなスタジオルームと、その中で直立する小さなパーカーの姿が見えたものだ。本当に。 今回の会場のでっかいスピーカーから浮かんできた姿はもっとド迫力。「ナウズ・ザ・タイム」での、パーカーとマイルスが吹きはじめにやおら前に乗りだしてくる感じや、パーカーの粘りくどい節回し。「コンステレーション」で、エネルギーを根こそぎ要求してくるパーカー自身の技量や、それをたやすく引き受けてしまう彼の性(さが)。「ビ・バップ」で、パーカーがヘロヘロな今だからこそ燃えたぎる他メンバーのさま。「スチューペンダス」で、演奏のうねりをパーカーが完璧に乗りこなすさま。「リープ・フロッグ」での、パーカーとガレスピーの銃撃戦のような丁々発止。「マイ・メランコリー・ベイビー」での、パーカーの無造作かつ、ばかでっかい歌いっぷりなど。チャーリー・パーカーの音楽の魅力を、大音量で充分に味わうことができた。 三浦さんが次々とレコードをかけるなか、会場の30名の反応はおおむね決まっていた。まずパーカーの吹くアルトサックスの一音目で苦笑い。どの演奏でも彼の一音目の音圧は各自の予想を軽々と乗り越えてしまう。その圧倒的なさまについ笑いがこみあげてしまうのだ。そして演奏が終わるとほぅっと安堵のため息がもれてくる。鉄球が乱射されるようなパーカーの音を、大音量で浴びた結果の反応である。受け止めたら怪我しそうな重く厳しい音だ。逃げ出したくもなる。しかしSPレコードで聴くと、人を傷つけない音色の表面の絶妙なまろみもまた感じるのだ。そして厳しさの奥にはしびれるような甘美さがある。鑑賞会終了の頃には私も心地よい疲労感でぐったりしてしまった。 欲を言えば、SPレコードとは何か、なぜSPレコードでチャーリー・パーカーなのかという、企画のイントロダクションが随所にあればもっと一般層にも受け入れられやすかったのではという気もしなくはない。しかしながら会場の大半を占めた好き者には大満足の会合だったのではないだろうか。 この鑑賞会はシリーズ化されており、第2回が9月9日(日)、第3回目が11月4日(日)と続く。 三浦和三郎さんの運営サイト「The Bird's Legacy」 http://bird.parkerslegacy.com/ 会場の「喫茶茶会記」のサイト http://gekkasha.modalbeats.com/ 2012. 7. 4 よういち Permission granted by Doris Parker under license by CMG Worldwide Inc. USA |