ラバーマン・セッションとロス・ラッセル  

 

今となっては伝説と化しているバードのラバーマン・セッション ですがこれはジャズ・ファンであれば殆どの方は存在位はご 存知だと思います。

1946年にロス・ラッセルの経営する小さなレコード会社ダイアル に吹き込んだ中の4曲がラバーマン・セッションです。曲目はマックス イズ・メイキング・ワックス、ラバー・マン、ザ・ジプシー、ビー・バップで 構成されています。はっきり言って全てNGになる様な録音なのです がロス・ラッセルは販売にふみきりました。

では何故ラッセル氏はこの様な聴くに耐えない失敗テイクを全て 市場に出したのか?ここからは自分の想像です。

Copyright (C) 2000 Herman Leonard Photography L.L.C.
BIRD Blows
二通り考えられるのですが一つはラッセル氏もレコード会社を経営 している建前少しでも利益を出さなければいけません。利益を少し でも上げる為、『確かにこの4曲は売るには忍びないがでも今自分 は金が必要なので、バードにはあとで頭を下げればいいでしょう』と ラッセル氏は思った。今一つは『確かにこの4曲は今出しても意味 は無いかもしれない。しかしバード程のアルト・プレーヤーもこの様 な演奏をしてしまう時もある。今は全く評価されない事など目に見え ているがバードを超えるアルト・プレーヤーがこの先出て来るものな のか、甚だ疑問である。それだったら、いっその事バードの貴重な 記録として将来に残そう。いずれ評価されるかもしれない』。

以上の2点をラッセル氏は考えたのではないかと自分なりに解釈 をしているのですが、自分は後者の考えを選びたいと思います。 ラッセル氏はバードが世に出る以前からジャズを熟知しており、 安易な考えであの様な録音を僅かなお金の為に世の中に出す 訳はありません。全て天才バードの貴重な記録の一部分として 市場に出したのではないか。この様に自分は考える訳です。

21世紀の今でもラバー・マン・セッションは沢山のバード・フリーク に聴かれています。評価は別として貴重な記録として皆聴いている と思います。これもラッセル氏の勇気ある決断があったからこそだ と思い自分はラッセル氏に『ありがとうございます』と心のなかで言 っています。そのラッセル氏も昨年末亡くなって仕舞いました。残 念でなりません。今頃、天国でバードとの再会をお互いに喜んで いると思います。

素晴らしきバードの記録を残してくれたロス・ラッセル氏に改めて お礼を言わせて頂きます。『どうも有難う御座いました』。

 

 

2002. 1.16 小西 謙
 

 

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