当時の「Bird 50!」のこのサイト用宣伝バナーです Bird 50! ~チャーリー・パーカー没後50年の夕べ~ レポート 第一部 2005年3月13日(日)新橋「SOMEDAY」にて行われた、チャーリー・パーカー没後50年イベント「Bird 50!」のライブ・レポートです。内容盛りだくさんのイベントでいろいろありすぎて、駆け足のご案内になってしまうのがもったいないのですが、出来る限りをお伝えいたしましょう! 5年前のイベント、Bird 2000でもそうでしたが、この日も超満員。会場のSOMEDAYは大久保から新橋に移転して広くなったものの、その許容数を上回る人の入りです。老若男女、様々な層の方々が入っているのがうかがえます。宣伝のチラシ配りを手伝ったワタシも感無量です。 18:00 Bird 50! 開催 ~ エスクワイヤキャッツ・スーパーサックス の演奏 会場のざわつくなか、「Parker's Mood」のイントロがサックス3本でファンファーレのように響き渡りました。Bird 50!の開催です。 日本チャーリー・パーカー協会辻会長からのあいさつがあります。パーカーこそ20世紀の音楽として後世に引き継がれるべき数少ない音楽家のひとりであるとのこと。 そう、そのとおりですね。けれどもそのためには皆がパーカーを評価して、伝えていかなければならない。そのためにボランティアで開催されたイベントがこの「Bird 50!」なのですね。 演奏が続きます。バンドはエスクワイヤキャッツ・スーパーサックス、慶応大学OBの方々中心に結成されたバンドです。テナー、アルト、バリトンのサックスをフロントに立てて、あのパーカーのアドリブソロをユニゾンで演奏した本家スーパーサックスばりの演奏を聴かせてくれます。ミュージシャン平均70歳のこのバンド、心地よくマイルドに3管が響いてくるのはやはり年輪を重ねたせいなのか。 ステージの壁からはがれ落ちた「Bird 50!」の張り紙をアルトサックスの方が演奏中に悠然と張りなおしましたよ。さすが余裕を感じさせますね。 18:20 トークセッション その1 ジャズの著名評論家たちがパーカーについて語り、思い入れのある音源を会場に流す、トークセッションです。ジャズ喫茶「いーぐる」のマスター後藤雅洋氏、パーカー研究家大和明氏、Verve全集を監修した岡村融氏、パーカーコレクター三浦和三郎氏が熱く語ります。 後藤氏の語るテーマは「タイムマシンで過去に連れて行ってくれるとしたらどこに行きたい?」。 会場にいるパーカーフリークの答えは決まっていますね?当然パーカーのライブ会場でしょう!後藤氏が選んだ行き先は1952年9月26日ロックランドパレスでのライブ。パーカーを生で体験できないくやしさを一番感じさせる演奏とのこと。 「Lestrer Leaps in」が会場に流れます。たしかにこれを生で味わったら人生ガラっと変わるんだろうな~(CD・レコードで聴いただけで、ワタシは少し人生踏み外してますけど)。 大和氏がパーカーの魅力について語ります。大和氏は個人的には今日一番お会いしたかった方です。実は名前の印象から少しコワモテのイメージが私にはあったのですが、とんでもない。非常におだやかな方でした。ただ、パーカーの圧倒的なアドリブのなかにある歌心について大和氏が語るとき、柔和な語り口のなかにもパーカーに対する愛情と情熱がひしひしと迫力を持って伝わってきます。 岡村氏がパーカーVerve全集の監修当時の裏話を語ります。全集のおまけをつけるため、当時未発表だった1952年3月25日ライブの「Ornithorogy」の演奏を、ライブ主催のジェリー・ジェローム氏からなんと6千ドルで吹っ掛けられながらも購入したが、すぐに同音源がイタリアのレーベルからポリドールへと放出されて市販されてしまい、ガックリきたとのこと。このようにパーカーの音源をめぐって泣き笑いした人が昔からいっぱいいたのでしょうね。 そして三浦氏が本日の目玉のひとつ、未発表音源を会場に流してくれました。1945年12月17日ビリーバーグスクラブでのライブ演奏「How High the Moon」、スリム・ゲイラードをリーダーとした、ガレスピーとの双頭バンドです。ノイズは入っているものの観客のざわめきが、少し小さめのクラブの雰囲気を感じさせます。 満を持して出てきたパーカーの一吹きは、クラブの規模やバックの演奏とアンマッチな大きな音塊。もう圧倒的です!1945年も年の瀬にもなるとパーカーの音楽はすっかり完成していて、当時からライブで大暴れしていたことがわかります。スゲ~。 この音源、私知りませんでした。三浦さんからはこの後で他の未発表音源の存在も教えてもらいました。勉強不足を痛感しましたが、同時に聴いたことのない音源がまだまだあることがうれしくもありました。 19:10 宮武達郎カルテット with 増田ひろみ トークセッションの合間にライブ演奏が入ります。宮武・増田両氏の双頭アルトのバンドです。「フィル・アンド・クィル」みたい、という声が会場からもれ聞こえます。太い音で熱気のこもる宮武氏、熱を内に秘めてクールに迫る増田さん、好対照です。演奏が進むにつれ、両者とも音が力強くなってきて会場も盛り上がってきましたよ。 19:40 トークセッション その2 引き続きのトークセッションとして、日本人では希少なパーカーのライブを生で体験した瀬川昌久氏、日本ホットクラブ会長の石原康行氏、ジャズ評論家岩浪洋三氏、佐藤秀樹氏、コルトレーン研究家藤岡靖洋氏が次々と語ってくれました。 瀬川氏はパーカーのライブを生で体験した話、そして1948年(昭和23年)3月に馬渡誠一CBナインというバップバンドがコンサートをした時の話をしてくれました。1948年当時からビ・バップを演奏していた日本人バンドがあるという事実に驚きです。当時はアメリカでもまだビ・バップは一般的ではなかったイメージがありますよね。 岩浪氏がパーカーにまつわるよもやま話で会場を笑わせます。1953年のJATPではパーカーが来日予定でパンフレットにも掲載されていたのに、麻薬常習者パーカーの入国規制を恐れたせいか結局こなかったとのこと。パーカーが来日していたら日本のジャズが変わっていたかもしれませんね。 石原氏はソニー・スティットとアート・ペッパーの共演アルバム録音プロデュース時に、両名からパーカーについて聞いた時のことを語ります。 私が関心を惹いたのは石原氏がスティットから聞いたことばです。 「パーカーは偉大なミュージシャンだ、自分はパーカーにあこがれてアルトを吹いた」。 スティットはパーカーが世に出る以前からパーカーに似た演奏をしていた、という説を聞くことがありますが、スティットにとってもパーカーはアイドルでその演奏スタイルを追っていたのですね。貴重な証言だと思います。 佐藤氏はパーカーの魅力について、どんな悪い音質の中でも大きな存在感を感じることを取り上げています。キース・ジャレットがパーカーのプライベート音源のような音質の録音を残したとして、そこからキースの良さを実感できるか?と言われると確かに疑問ですね。 そして藤岡氏が2005年2月20日にニューヨークで開催されたGuernsey’s社主催のジャズ・アイテムのオークションの報告を聞かせてくれました。約400点出品された大規模オークションですが、みな入札価格が高すぎて藤岡さんはずっと指を咥えて見ていたそうです。でもそれらアイテムの実物を見られただけでもうらやましいですよね。 パーカーのキング製アルトサックスはどうやらカンザスシティのジャズミュージアムが落札したそうなので、展示品として一般人の見学できる機会ができることでしょう。 よかった、よかった。 20:30 休憩にて 休憩時間に同じテーブルにいらっしゃった瀬川氏に、昔から直接お聞きしたかったことを、ずうずうしくもこの機会に聞いてみました。それは、 「パーカーの生のライブ演奏のサウンドに近いレコードはあるのかどうか」。 瀬川氏の答えは「ないですねぇ」。パーカーの音はビッグバンドにまったく押されない対等な音で、会場の奥まで届いて響き渡る。これを表現している音源はちょっと見当たらないとのことでした。貴重なお答えありがとうございました! パーカーの生のライブ演奏はスゴイんだろうなぁと、ボケ~と空想しているうちに、弦楽器を持った演奏者の方々が次々とステージに集まってきました。本日のメイン、沢田一範 ウィズ・ストリングスがいよいよ始まります。 第二部へ続く
2005. 3.20 よういち
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