Bird 2000 Ticket
「Bird2000」開催時のチケットです

Bird 2000 ~パーカー生誕80年記念イベント~
 レポート 第二部
 

 

休憩時間に入ったと同時にちゃっかりトニー氏にサインをもらいにいきました。
こころよく引き受けてくれるトニー氏。書いてもらうモノはもちろん「Cafe Society」のバードのCD。バードとトニー氏の共演が入っているCDです。それに気づいたトニー氏喜んで、ジャケットから文字をはみだしながらサインしてくれました。うれしい~。気がついたら背後にサインをまつ列ができてます。わたしへのサインはジャケットが小さいので彼の名前だけでしたが、ほかの人の色紙には「The Prophet of Black Jazz」と書かれています。
「Prophet…ってどういう意味でしたっけ…」
「え~っと、たしか…、よげんしゃ?…って意味だったような…」
パーカーは黒人ジャズの預言者だ、という意味のようです。なるへそ。

サインを待つ長蛇の列がいまだおさまらないまま、待ちに待ってた大森明クインテットの演奏が始まりました。



21:00 大森明クインテットの演奏

最初の曲は「Little Willie Leaps」。ナバロと共演した音源やディーン・ベネデッティの音源など、パーカーの演奏のなかでも個人的に大好きな曲です。
どっしり安定したアルトをがっしり支えるリズムセクション。アルトの大森氏が吹けば吹くほどメロディーがひろがっていきます。トランペットがふくよかな音色で演奏を盛り立てます。コテコテのバップ曲でありながら余裕と楽しさを感じる演奏です。
次の曲は「Quasimado」、ってこれまたシッブイな~。この曲演奏している人みたことないぞ。ミュートをつけたトランペットとアルトが一緒にテーマを吹くと、お~DIALの演奏とダブって聞こえる~。トランペッターはメガネがずれながらも暖かみのあるフレーズを吹き上げる、ピアノがうるおいのあるサウンドを響かせる、おだやかなテンポの中、アルトは執拗にダブルタイムフレーズをくりだすが、そこから聞えてくるフレーズもどことなく暖かい。
シロウト目にもむずかしそうな最後の「Ko-Ko」のイントロもまったく破綻なく独自のフレーズを吹き上げる。いや~、はやいはやい。ドラムスの疾走感がキモチいい。

それにしても今日のライブは普段体験するライブと雰囲気がちょっと違う。先ほどのトークセッションのときもそうだったけど出演者と観客の垣根を感じません。演奏者や講演者にはどこかしら親しみを感じ、観客は観客で出演者を盛り立てようとする空気を感じます。それはきっと観客、演奏者、リスナー、コレクター、評論家、プロ、アマ、スタッフ、すべからく「パーカーを愛するがゆえにこの場に集まった」という共通認識があるからだとおもいます。会場全体が親密な空気に包まれています。これもパーカーの力でしょう。



21:30 大森明クインテット featuring トニー・スコット

今日の最大の目玉です。大森明クインテットにトニー氏が加わって演奏します。曲は「Now's the Time」。
あれだけ完成度の高い安定した大森氏のバンドに彼がまじると空気が一転、かつての52丁目の雑踏を想像させるような、ある種猥雑で迫力に満ちたサウンドになりました。トニー氏、スゲー音。縦横無尽にクラリネットの音色が飛び交います。トニー氏がわたし達の知らないはずの'40年代ビ・バップ・イラの空気を現代に運んできてくれているように感じます。
そして「Lover Man」。クラリネットの音は生々しくトニー氏の肉声であるかのように耳に届いてきます。決して甘くないサウンド。
「今の奴は知らないだろうが、ジャズクラリネットはこう吹くものなんだ!」
そう言っているようにも聞こえます。
途中でトニー氏は、凛とした姿勢で渋味と迫力のあるボーカルを聴かせます。この時点で彼がいったい何歳なのか、もうまったくわからないようになります。リズムセクションも喜びをあらわにしてトニー氏に付き従い、盛り立てます。場の空気を彼一人で変えてしまいましたよ。



22:00 ジャム・セッション

そしてトニー氏のスキャットナンバー「Scot Scat」でプロアマ入り乱れたジャム・セッションに突入します。
アルトサックス奏者、クラリネット奏者、トランペット奏者、などなど何人そろったのでしょう?ステージ上はぎゅうぎゅう詰めで客席までプレイヤーが溢れています。老若男女プロアマ関係無くそれぞれが自分の全てをぶつけたソロをみせてくれます。
そんな中でもトニーが大将。ランニングベースのソロにも景気よく声をかけて、ドラムスともスキャットで掛け合いをします。トニー氏がさまざまなリフを即席で作りだし声をあげるとプレイヤーもそれにあわせて合奏します。大盛り上がりです。

ジャム・セッション風景
一番手前の後ろ姿はもしかしてワタシ?
Bird2000 JamSession
 

だんだんトニー氏のスキャットが暴走しはじめたぞ~。
なんか足を広げてスキャットしながら手を横にかかげた。もしかして相撲の土俵入りか~??
おぉ~なにか抜いたぞ~?なにか突き刺す真似をしてるぞ~。フェンシングか~!
おぉ~となりのトランペッターのわき腹をつまんだぞ~。スキャットでぼそぼそ雑談を始めたぞ~。「ちょっとキミ運動始めたほうがいいんじゃないか。まずいよ」~。
おぉ~見栄を切ったぞ!歌舞伎かぁ~??!ドラムスが拍子を取る「どどどどどん」。
もうスキャットの領域を超えている!(当たりまえだ)

今度はトニーのスキャットにあわせて客席が合唱します。もうこのあたりになってくると私の頭も朦朧としてきます。

曲は「All the Things You Are」に移ります。各人が力をふりしぼってプレイします。熱気がたちこめ、まだまだ演奏の続くなか、トニー氏は静かに会場をあとにします。ジャズが生き生きしていた時代の空気をそこに残して・・・。

最後は当サイトアンケート人気No.1の曲「Confirmation」。ウクレレとハモニカもまじってすごいことになってます。ジャズが好き、ビ・バップが好き、バードが好き、そんな人々の「Confirmation」のテーマの大合奏は天の上のパーカーに届いたに違いありません。



23:00すぎ 「Bird 2000」 終了

個人的印象ではパーカーファンというのはジャズの世界のなかでも意外と少なくて、このサイトを始めてからどうやら存在するということだけはわかった、と、このような状況で「Bird 2000」が開かれることで会場にあふれんばかりのパーカーファンを初めて確認することができました。つくづくこのサイトを作ることで「Bird 2000」に参加するきっかけを得ることが出来てよかったとおもいます。
リスナー、プレイヤー、評論家、プロ、アマ、関係無くパーカーを愛するものは同志、という仲間意識を会場に来た皆さんから感じました。貴重なお話と気持ち良い演奏をきかせてくれた出演者の方々、このイベントを開いていただいたスタッフの方々、ありがとう。

そして現代に生きるパーカーファンと、チャーリー・パーカーそしてその時代の空気とをリンクしてくれたトニー氏には感謝しきれない。彼はサイン色紙に「黒人ジャズの預言者」と書いていたけどトニー氏こそがビ・バップ・イラ、チャーリー・パーカーの預言者だった、とおもう。

貴重な体験を、ありがとう。






 

 

2000.11.28 よういち
 

 

Photos in this page is from "The Charlie Parker Society of Japan"
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