個人的 パーカー音源紹介 番外編
録音音源:
クリント・イーストウッド監督 : 映画 「BIRD」 サウンドトラック
主な収録CD:
SME RECORDS「BIRD - ORIGINAL MOTION PICTURE SOUNDTRACK -」
(as )C.P., Charles McPherson
(tp )Red Rodney, John Faddis
(vib)Charlie Shoemake
( p )Monty Alexander, Walter Davis Jr, Barry Harris
( b )Ray Brown, Chuck Berghofer, Ron Carter
(ds )John Guerin

  1. Lester Leaps in
  2. I Can't Believe That You're in Love with Me
  3. Laura
  4. All of Me
  5. This Time the Dream's on Me
  6. Ko Ko
  7. Cool Blues
  8. April in Paris
  9. Now's the Time
  10. Ornithology
  11. Parker's Mood
BIRD - ORIGINAL MOTION PICTURE SOUNDTRACK -


 映画「BIRD」のサウンドトラック。パーカーの演奏ソースとそれにあわせて録音した現代のプレイヤーのソースなどをかけあわせた、高度な編集技術で有名なものです。アカデミー音響賞を受賞したそうですね。

 結論からいうと、パーカーの音楽として聴くには問題がありますが、これはこれでおもしろい実験作だとわたしはおもいます。

 一聴して気づくことは、パーカーが吹いている昔の録音ソースと現在のプレイヤーの録音ソースの肌合いがまったく違うことです。
 それは一言で言えば生々しさの違いというものでしょうか。
 モダンジャズがまだひとつのスタイルとして確立していないためなのか、ちょとコモりぎみにイコライズされたパーカーのサウンドには、完璧さの影にある種の不安定さのようなものが潜んでいます。音色にフレーズに、生身の人間が本来持っている割り切れないどろどろした不安定な部分を感じさせます。その不安定さは裏を返せば生々しさになり、やがては逸脱やアナーキズムにもなっていきます。
 一方、現代のミュージシャンの録音ソースのサウンドのなかには、いわゆる4ビートジャズというすでに固まってしまったスタイルの持つ安定性が感じられます。かなり高度になったのであろう演奏の中で、「熱気」「粋さ」などといったものまでもがスタイルのなかに記号化されて収まってしまったような、そんな印象があり、その分生々しさといったものが洗練されて希薄になってしまったようにわたしには感じられます。電気増幅されたベース音、デジタルっぽい響きのバスドラムからは4ビートジャズというスタイルに守られているという余裕が感じられます。

 モダンジャズが暗中模索の状態で、現在進行形で生み出される、その時代とともに足並みそろえて歩んでいった、ビビッドなものだったころの録音。モダンジャズが4ビート・ジャズといわれるようなひとつのスタイルに収束してしまい、既存のものの反省の視点から物事を始めざるをえなくなった現代のプレイヤーの録音。そして音楽の共感とは無関係にちりばめられた観客の歓声の録音ソース。この3つが交じり合うと、おたがいの空気の温度差がモザイクのようにからみあっているような違和感を覚えて、一種のパロディーのようにも感じられてしまいます。

 なんだかこうして書いていると、ケナしているようにみえますが、こういったことが感じ取れて味わえてしまうこと自体、それだけでこのサウンドトラックでの試みには意義があるとおもいます。それにこんなアホで大胆な企画、結構笑えて好きです。相当な技術と情熱がなければ、こんなことおもいついてもやろうとしないでしょう。

 それにしてもパーカーの独白のようなひっそりとした「I Can't Believe That You're in Love with Me」等の録音ソースがこんなに賑々しく彩られて、スイングするものにさせられてしまうとは・・・。

 

1999. 9.28 よういち 

 

 

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