このお城のジャケット、わたし大好きなんです。広大で爽快な空と湖(?)にポカンと浮かんだお城、どことなくVerveというレーベルに似合っているように思います。いったいどこにあるんでしょ?スウェーデン?もしかして結構有名なところ?
さて、Verveのパーカーの音源を聴いていつもおもうことなのですが、この当時のVerveの音源はおしなべて音源それ自体にVerve独特のカラーをおびているようにわたしには感じられます。パーカーやそのメンバーの演奏の出来とは別に、どれもこれも妙に柔和で陽気な雰囲気がどことなく感じられるのですが、どうでしょう。
このスウェディッシュ・シュナップスのアルバムでの演奏もそのひとつでして、肉厚なパーカーの音色の中にまでどことなく暖色系の彩りが見受けられます。その要因がどこにあるのか、レコーディングの音質なのか、メンバー選択なのか、収録方法に特色があるのか・・・。結局何度聴いても決定的なことはわかりませんでした。とはいえ、あちこちでVerveらしさのツボは散見されます。
このときのメンバーは、シンプルで力強いスネアとバスドラムを響かせるケニー・クラークのドラムス、ツボをこころえた小気味いいフレーズを聴かせるジョン・ルイスのピアノ、ガレスピーのように高低差がありながら鋭角的でなく大きくうねるような曲線を描くレッド・ロドニーのトランペット。みな華のあるVerveのイメージにぴったりです。
曲のことで言えば、パーカーはVerveでもかなりの数のオリジナル曲を提供しています。この音源の中では「Back Home Blues」の伸びやかな演奏がVerveに似つかわしいようにおもいますが、「Blues for Alice」「Si Si」「Swedish Schnapps」もそれぞれ名曲です。
しかし、なぜか不思議なことにVerveで発表したパーカー作曲のナンバーはほとんど他のスタジオ・ライブ録音で演奏されていません(例外は「My
Little Suede Shoes」でしょうか?)。それがVerve固有のイメージを保っている要因のひとつなのかもしれません。
なんだかんだでVerveらしい要素のそろった音源です。ノーマン・グランツ抜け目がないですね。
このVerve独特のカラー・雰囲気が好みかどうかで、いっそうこのアルバムに愛着が湧いてくる人もいるでしょうし、逆に余計なものに思えてくる人もいることでしょう。パーカーのソロは安定していて安心して聴いていられるので、パーカーが始めての人にもおすすめ、ではあるのですが、Verveのカラーが邪魔をして、パーカーの全体像をつかみ損ないかねないようにもおもいます。パーカーのアナーキーな凄みを知るためには別の音源もあわせて聴いてもらうほうが良いかも。
それにしても、どうしてVerveのパーカー・ナンバーの演奏が他にほとんど残されていないんでしょうか?プライベート録音にさえ残されていません。Verveとの契約に気を使ったんでしょうか。
あのパーカーが?そんなわけないか。
2001. 5. 5 よういち
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