高橋なおみのRadio Cafe ~チャーリー・パーカー特集~ その2 な = 高橋なおみさん む = 村山秀樹さん ----- な:はい、引き続き高橋なおみRadio Cafeをお届けしております。本日はチャーリー・パーカー研究家の村山先生をお招きしてお届けしております。 む:よろしくお願いします。 な:よろしくお願いします。え~さて、Now's the Time、Donna Leeと来ましたけども、続いてお届けしていくのは・・・。 む:ええ、これはですねFamous Alto Breakといいまして、曲そのものはNight in Tunisiaという曲なんですけども、Night in Tunisiaという曲のですね、録音で言いますとファースト・テイク、一番最初の録音でですね。 実はパーカーの出来は素晴らしかったんですけれども周りのメンバーがあまりにもちょっとひどかったということでですね、録音そのものはボツになったと。ところがプロデューサのロス・ラッセルという人がですね、このパーカーの録音をボツにするにはあまりにも惜しいというほどのパーカーの出来だったそうなんですけども、非常に難しいTunisiaのブレイクのところを完璧に吹ききったということでですね、不完全テイクであるにもかかわらずこのブレイクだけが発売されたと、こういうテイクなんですね。 で、これ非常に有名なテイクなんですけどもTunisiaやるときは皆がこのブレイクをやりたいらしいんですけども未だにできたという話はちょっと聞いたことはありませんでですね非常にむずかしいブレイクです。 ただこれチャカ・カーンというブラック・コンテンポラリーの歌手が、ご存知だと思うんですけども、ちょっと今アルバム名は忘れましたけどもこのNight in Tunisiaを歌っておりましてですね、そのバックでハービー・ハンコックが完璧にこれをコピーしてやっているというテイクがありましてこれちょっとおもしろいんじゃないかとおもうんですけど。私聴いてみたんですけども、打ち込みなのかほんとに生でやってるのかちょっと区別つかないんですけども少なくとも確かに素晴らしい出来でした。 な:はい、そのもともとのチャーリー・パーカーのアルト・ブレイクが聴けるという・・・。 む:そうですね。 な:あの、インターネット上の論文の中でもこれについて触れてらっしゃるところがあって、一回聴いてみたかったんですよ。 はい、それではそのFamous Alto Break。すぐ終わっちゃうんですよね。 む:そうですね、はい。 な:なので、集中してお聴きください。 ~「Famous Alto Break」 1946年3月28日 Dial Studio Recordingsより な:というね(笑い) む:ええ、マイルス・デイビスのソロが出たところで終わってしまうという、ちょと惜しいんですけども、これがパーカーの有名なNight in Tunisiaのブレイクであるということで、ほとんど完璧に吹ききってますね。 な:う~ん、ほんとにこの短いなかに凝縮されて・・・。 む:そうですね。 な:その周りのミュージシャンの演奏がどれだけひどかったのか(笑い)ちょっと聞いてみたい気も・・・。これがボツになるほどひどかったっていうのはねどんなものなんだろうかと・・(笑い)。 む:まあ逆にいうとどうしてもこれを残したかったというプロデューサの、我々にとってのありがたさというか、そのへんは感じますね。こういうあらゆるテイクをですね、残しておいてくれて我々が今聴けるというのは・・・、ほんとに我々の宝ですねこれは。 な:えぇ、やっぱり今の、今日も村山先生にお持ちいただいているんですけども、コンプリートというアルバムが一時ドワッと出たのはそういうことなんでしょうね。 む:そうですね。とにかく残されたあらゆるものを出そうというのはコレクターとかプロデューサがしているみたいでですね、昔はパーカーのレコードなんていうのは殆ど世の中に出ていなかったんですけども、今はこういう時代になって非常にありがたいという気はしますね。 な:そうですね~。Dial, Savoy, Verveとね、ほぼ出てますよね。 む:そうですね。スタジオ録音は殆どそれでそろうとおもいます。 な:まあそこからね、聴き続けていくのがなかなか体力勝負で・・・(笑い)。 む:えぇ、体力勝負ですね(笑い)。確かにお聴きになって分かるようにSP時代ですから針の音が入ってますし、音そのものがLow Fidelityですし、聴きにくいところあるんですが、それでもそこから聴こえてくるパーカーの音っていうのは素晴らしいですね。 な:そうですね。やっぱりフレーズっていうところに話がどうしても行ってしまうんですけども、この音色っていうのもやっぱり素晴らしいですよね。 む:えぇ、パーカーの音っていうのは、楽器そのものは私よくわからないんですけども、非常に硬いリードで普通の人が吹けないような楽器の状態らしいんですけども、それをどんな状態でも吹ききってしまうという、しかも自分の音が出るという素晴らしさですね、これは。 な:う~ん、本当に音とフレーズが一体となったチャーリー・パーカーということなんですが。 * な:さて、続いては、アップテンポの曲が続きましたけれどもバラードですね。 む:はい、これはですねEmbraceable Youというジョージ・ガーシュインの曲なんですけれども、デューク・ジョーダンのピアノのイントロが素晴らしいのと、パーカーの出だしが、この原曲をご存知の方は「どうしてこんな出だしで出だせるのか」というくらい素晴らしいフレーズで、しかもパーカーというとスピードばかりがいろいろ議論されますけども、バラードをこんな素晴らしく吹くという1つの例だとおもいますね。 な:はい、それではお届けしていきましょう。Embraceable You。 ~「Embraceable You (Take A)」 1947年10月28日 Dial Studio Recordingsより な:はい、Embraceable Youでした。え~パーソネルを村山先生の方からご紹介いただきたいとおもいます。 む:え~チャーリー・パーカーがアルトサックスですけども、トランペットは聴いてお分かりのようにマイルス・デイビスです。もうこのころはだいぶ良くなって、というとおかしいですけど、だいぶ変わってきておりますね。それからピアノがさきほどきれいなイントロを出したピアノがデューク・ジョーダンっていう、最近日本にもよく来ていますけどもデューク・ジョーダンがピアノですね。それからベースがトミー・ポッターそれからドラムがマックス・ローチという、まあDialの代表的な編成の組み合わせですね。 な:もうこれはすごくいいですね。 む:そうですね。これは要するに先程言ったようにスピードばかりがうんぬんされてますけれどもバラードをこういうふうに吹くっていうのは、スウィング時代の人にはちょっといなくてですね、おそらくパーカーがバラードを変えた一人だと思うんですけども、バラードの吹きかたっていうものがモダン・ジャズの世界に入ってずっと変わってきたということの好例ですねこれは。 な:はい。ということで、お届けしましたのはEmbraceable Youでした。 それではCMです。 -CM- 2002. 3.22 編集: よういち
協力: 村山 秀樹 ・ 高橋 なおみ Permission granted by Doris Parker under
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