ゆかいな BIRD'S EYES  

 

個人的な話ですが、わたしがパーカーを聴きはじめた時期はそれほど昔ではありません。CDで集めはじめたくらいですから、昔からLPでパーカーを追ってこられた方々に比べたら、こんなサイトを開いていることも申し訳ないようなジャズ歴なんですが、そんなジャズライフのなかでも、PHILOLOGYのBIRD'S EYESシリーズのCDの出現はとても印象に残っています。

白地に線描画で地味なジャケットではあるけど、でっかく描かかれた(もしくはチャン・パーカー氏の写真からスキャニングされた)パーカーの鋭い目がこちらにアピールしてきます。その鋭い目のジャケットが色違いで数巻分レコード店にずらっと並ぶと、当時パーカーにそれほど思い入れがなかったわたしも、なんだろうとおもわず手にとって見てしまいます。そこはかとなく怪しいニオイが、そのCDからはただよってきます。

Copyright (C) 1999 Bob Parent
BIRD at OPEN DOOR
その後、ちょうどBIRD'S EYESのことを忘れるタイミングで新しい巻のCDがコツコツと出版されていきます。わたしにとっても次第にパーカーが最重要のジャズミュージシャンになっていったので、BIRD'S EYESを買い揃えていくことがジャズライフの一部になっていきました。ジャケットの色も白地のものから次第にカラフルになっていき、次はどの色になるのかを心待ちにするのも楽しみのひとつでした。

せいぜい10巻ほどで終わるだろうとふんでいたこのシリーズですが、結局20巻を超える大きなシリーズになり、新しい巻がでるたびに「まだでるのか!」とうれしい驚きを与えてくれました。

内容といえば玉石混交もいいところで、「おお、'47年ものだ、楽しみ!」と思いながら聴いてみるとノイズだらけだったり、既出のものばかりの巻だったり、なかには20分ほどインタビューで占められていたり(ワタシ英語ききとれないもんね)・・・。ズッコケさせてくれるのもしょっちゅうでした。
まあ元々、1/4、2/3、5/6、7巻・・・という巻数のでたらめさがこの音源のいいかげんさを象徴しているような気はしました(まあ、これはLPからCDへ移す際の収録時間などの関係でしょうが)。各巻ごとに統一性の無い曲リストのレイアウト、まるであっていない曲リストのナンバーとCDの曲順など、さすがイタリアの出版、とおもいます。そこが魅力でもあるんですけど・・・。

しかし、それをおぎない余りある素晴らしい音源をBIRD'S EYESは提供してくれました。当時CDで存在していないことを嘆いていたBands for Bondsの音源、'46年Finale Clubでのライブ、'53年OPEN DOOR、珍品パーカーのアルトレッスンなどなど・・・。こういったものがひょこっと出てくるからやめられない。

さて、このBIRD'S EYES、ネタに困ると「パーカーに関連するミュージシャンだから」と他のミュージシャンの音源を混ぜ込むクセがあります。

まあこれが一番わたし達をズッコケさせてくれます。'44年クーティウィリアムス楽団のバドパウエルの音源、'49年のタッドダメロン楽団の音源など・・・。一巻の半分を他の人の音源で占められていたりすると「サ、サギや・・・」とおもわずつぶやいてしまいます。

でも、これらの音源、なかなか捨てたものではないです。結構聴いているものもなかにはあります。特にわたしの愛聴しているのがハリウッドでのジョーメイニの音源。ジャックシェルドン、ケニードリュー、ズートシムズなどの入り交じったジャムセッションです。このなかでオイシイところをすべてかっさらっているのがズートシムズ。ジョーメイニよりはるかに目立っています。カラッとした明るい雰囲気の中で、吹けば吹くほどノリノリになってきてひたすら心踊るメロディーを紡いでいきます。この音源は大好きです。

 '47年のフィルウッズの演奏なんてのもあるんですねぇ。だいたい16歳のころの演奏になるんでしょうか。よくこんなもの残ってましたね。メンバーも、ギターにサル・サルバドール、ドラムにジョーモレロなんていう凄いものです。フィルウッズマニア必須音源でしょうね。内容はその凄さに似合わず肩の力の抜けた雰囲気がただよっています。ウッズのプレイからはまだあの濃いアルトのサウンドは聞こえてこないようです(というかそれが聴き取れるほどの音質ではない)。パーカー並みに吹こうとして、音数を並べても、パーカーから影響を受けている部分がまだ希薄なのがほほえましい。それでも16歳という年齢を考えたらやっぱりムチャクチャうまいな。ほとんどワルふざけの「Embraceable You」のボーカルはご愛敬。

それにしてもルイ・アームストロングの音源まで入っているというのは・・・。「パーカーに関連するミュージシャンだから」というのはちょっと苦しいんでないかい。いや、広義的に考えれば「パーカーが影響を受けた」といえるのかもしれないけど・・・。

最後は話がおもいきりわき道にそれてしまいましたが、とにかくわたしにとってこれほど一喜一憂した音源はこの先出てこないような気がします。25巻でストップしてからもう何年たつのでしょうか。いつかまた、さりげなく26巻が店に並ぶような気がしてならないのですが・・・。
BIRD'S EYESからは編者のバードに対する愛情がひしひしと伝わってきます。それは、わたしにはほとんど読めないけど、ライナーノーツの最後の一言だけで充分伝わってきます。「Bird Lives!」
 

1999. 8. 1 よういち
 

追記: 『BIRD'S EYES』シリーズに興味のある方はリンク集へどうぞ。オンライン販売への案内をしています。(2002. 3.17 よういち)  

 

Photos in this page is from "Jazz Pix" by Bob Parent
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